「なぜ人はYouTubeチャンネルメンバーシップ登録なんかするのか」
芸能人のファンクラブよりも高い価格設定
月額490円 = 年5880円
これはジャニーズのファンクラブの年会費よりも高い。
AKBファンクラブの10倍だ。
別に登録したって物凄くイイコトがあるわけじゃない。
チャット欄で自分の名前が緑色になって、チャンネル謹製の絵文字が使える。その程度のもの。
たったそれだけのために有名アーティストのファンクラブより高い年会費を払う人間がいるだろうか?
もちろん、超大手YouTuberのチャンネルとなれば入会する人も多いだろう。
なにしろ人気者だし、母数が物凄く大きい。
でも、ほとんど名の通っていない、どこの誰かも分からない素人が、ただゲームをプレイして喋っているだけのチャンネルに、芸能人のファンクラブみたいな会費を払ってメンバーになりがる人なんて、いるわけがない!
そう思うのはごく当たり前のことだ。
小規模なチャンネルにめちゃめちゃ加入者がいる現実
まず、登録者数7,500人や1.7万人のチャンネルは果たして「小規模」なのか?という話をする。
前提として、本来メンバーシップの利用資格があるのは登録者数が3万人を超えているチャンネルに限られている。
しかし、ゲームチャンネルの場合は特別に登録者数1,000人以上から利用可能となっている。
一般的なメンバーシップ利用資格要件を満たしてない登録者数3万人以下のチャンネルという意味で、ここでは「小規模」と言うことにする。
そのような小規模コミュニティにおいて、チャット欄にほぼメンバーしかいない光景というのは頻繁に目にする。
上の画像のような状況になると、もはやメンバー登録せずにコメントを打つことに引け目を感じるようになってくる。
気後れせずにコメントを打ちたいがためにメンバー登録する人もいるだろう。
では、そもそもなぜ小規模なチャンネルのチャット欄がこうもメンバーだらけの状況になるのだろうか。
とにかく自分のコメントを拾って欲しいリスナー達
一般にメンバーシップ登録する理由として挙がるのは以下のようなものだ。
- メンバー限定のスタンプを使いたい
- メンバー限定公開の動画が見たい
- 配信者を応援したい
これらがアイドルのファンクラブよりも高い金額設定が罷り通る理由になるだろうかと考えると、どうしても物足りなさを覚える。
限定公開動画の存在はそこそこ強いように思えるが、限定動画の有るチャンネルと無いチャンネルでメンバー率が極端に変わるという傾向を見出だせない以上、大きな理由とは言えない。
どこまでも人間の善性を信じるならば、「メジャーレーベルアーティストと違って規模が小さいからこそ自分が支えてあげたい」といった感じだろうか。
実際にそのような理由で登録する人も少なくないだろう。が、もう一つの隠れた理由が大きいのではないかと私は思っている。
それが「自分のコメントに反応して欲しい」というもの。
あまりライブ配信を見ない人からすると「そんなこと?」と思うかもしれない。
侮るなかれ。リスナー達のコメントを拾ってもらいたい欲求の強さは尋常ではない。
「お近付きになりたい」のとは少し違う。それはアイドルのファンクラブ会費を上回る理由にならない。ただただ「コメントに構って欲しい」のだ。その欲求がために、さして実があるとは言えない配信に何時間も張り付いたり、お金を使ったりする。それがリスナーという生き物である。
こうした空気感は小規模コミュニティのライブ配信を見れば嫌でも分かる。リスナー達はあの手この手で配信者の気を引こうとする。
自分が目立つためなら自作自演だって辞さない。
YouTube Liveでは、チャット欄にユーザー名が表示されるため、ここまで綺麗な自作自演が見られることはないが、リスナーという生き物が持つ承認欲求の強さはどこでも変わらない。
YouTubeで頻繁に目にする構ってもらうための戦略としては「配信者の私生活に踏み込んだコメントをする」というものがある。
これは本当に基本的な戦略だ。どこの小規模コミュニティへ行っても何人かは必ずこの手を使っている。
どのような手法かと言うと、例えば配信者に兄がいるという情報が出たらそれをずーっと憶えておく。そして、いつかゲームが詰まった時などに「もうお兄さんにやってもらいなよ」とコメントする。
妹がいると聞いたら「一人で〇〇のお店に入りづらい」という話になった時に「妹と行けばいいじゃんw」などとコメントする。
洗いものをサボり過ぎて使えるコップがなくなってしまうほどズボラな配信者、となれば「喉乾いた」に対し「ちゃんとコップ洗った?」。
PCのある部屋にエアコンがなく別の部屋の冷房を18度に設定してゲームしているとツイッターでつぶやいているのを見たら「暑い」に対し「ちゃんと18度にしてる?」。
本当にしょうもないと言ってしまえばそれまでなのだが、これは意外なほど効果が高い。
高確率で構ってもらえるし、ただ配信に張り付いてさえいれば誰にでも出来る。
あまりにも手軽に配信者の気を引けるため、乱用されて ”内輪ネタ" に派生することがままある。
他にも簡単に目立つための手法として「既プレイが未プレイのフリをして名探偵ぶる」というものがある。
既にそのゲームをやったことがあるのに、何も知らないフリをして「もしかして、これってダブルミーニング……?」「え?今なんであのキャラはあんなこと言ったの?」などとコメントをする。
ネタバレに近い行為なのだが、一応は初見で推察をしている体を装っているので、誰も表立って批判できない。配信者も、多くの場合は何となく察しながらも騙されてくれる。天才じゃん、と褒めてくれるし、周りもそれに乗っかってくれる。本人は気付かれていないと思っているのだから、これほど承認欲求が満たされることもないだろう。
しかし、この方法も使われすぎて、最近ではうんざりされることも多いので要注意だ。
承認欲求、有料化。
私達が普段どれほど低次元な小競り合いを繰り広げているか、充分に伝わったと思う。
さて、あの手この手で配信者の関心を引き合っているところに、メンバーシップ制度が導入されたらどうなるか。
メンバー登録した人のコメントは当然、よく拾われるようになる。
今まで「自分が一番この小さな庭で配信者からの注目を集めている」と思っていた何人かの常連にとって、これは気に入らない。早急に関心を引き戻す必要がある。登録する。
あとはもう、ドミノ倒し。一定の割合になると、メンバー登録しないままこのコミュニティに居座るのは悪いと思った人達が登録し始める。その結果が冒頭の画像の状況である。
はじめは芸能人のファンクラブより高額な会費を払って素人のチャンネルにメンバーシップ登録する人のことが不可解だった人も、ここまで読めば何となく分かったのではないか。
チャンネルメンバーシップ制度の導入は、ピラニアの群れに肉(有料)を放り込んだようなものだと。